| 熱とは?
発熱やそれに伴う痛みやだるさは体の異常を知らせる警告であり、感染症などから体を守るための防御反応です。体温が高いほど免疫反応が強く起こることが、いくつもの実験により明らかにされています。その熱だけを解熱剤で下げても病気自体は軽くなりませんし、悪化も防げません。逆に解熱剤で熱を下げなくても、発熱の大部分を占めるカゼなら時期がくれば自然に治ります。
「高熱が続いて脳炎にでもなったら・・・」というのは迷信です。確かに脳炎や髄膜炎は高熱の出る重い病気ですが、高熱が続く結果として起きるわけではありません。たとえば最近問題になっているインフルエンザ脳症は、高熱が何日も続いた後ではなく、多くの場合発熱から1〜2日目で発病します。
発熱時には免疫力が総動員で病気と闘っているわけですから、当然体を休めて安静にしなければなりません。解熱剤の過度の使用はそのような体の防御反応の妨げとなります。そのうえ、痛みやだるさがなくなる分、遊び回ったり無理に仕事をすることで病気に振り向けるべき体力を消耗することになり、好ましくありません。
解熱剤の使い方と注意
上記のように、解熱剤は本来使う必要のある薬ではありません。しかし、熱の持続により一日中熟睡もできず、飲食もままならない状態が続くことも体力の消耗につながり、過度のやせがまんも「過ぎたるは及ばざるがごとし」になりかねません。つらい山登りにも適度な休息が必要なのと同じですね。そこで適切なタイミングで解熱剤を使い、ぐっすり眠ったり、食事が摂れたりできるようにしてあげましょう。そのタイミングを考える際には以下の点を参考にして下さい。
熱が上がりきってから使いましょう!
こどもは体温調節中枢の働きが未熟なこともあり、急に39〜40℃あるいはそれ以上まで上がることがよくあります。そんな時に「38.5℃になったから」というだけで解熱剤を使ってもあまり効かなかったり、さらに上昇してしまいます。解熱剤を使ってから6〜8時間たってその効果が切れ、抑えていた体の発熱反応が出てきた時も同様です。熱の高さだけにとらわれず、解熱剤の使用は少なくとも熱が上がりきるまで待ってからにしましょう。また1日の使用回数は2回くらいを目安にして下さい。
夜中に使って家族みんなで休みましょう!
熱が上がりつつある時には体のだるさや痛み、寒気、ときには震えを伴いとても具合の悪いものです。しかし上がりきってしまうと少し楽になって眠れたり、こどもは元気が出て動き出したりもします。そのような時には急いで解熱剤を使う必要はありません。しばらく様子を見て、ぐずって泣き出したり、寝付けない様子が続いたら解熱剤の使用を考えてください。特に夕方の熱に早く解熱剤を使うと夜中になってまた熱が上がって泣き出したりすることが多く、ご両親が起きているうちは冷やしたり、さすったり、抱いたり、あるいは冷たい飲み物などを与えたりで相手をしてあげ、夜遅めに解熱剤を使うと朝まで親子ともにぐっすり休めるでしょう。
解熱剤の目的はひと休みです!
こどもの解熱剤には解熱効果の強さより安全性の高さが重要です。このため、世界的にアセトアミノフェンという薬が用いられています。(商品名では内服薬にピリナジン、カロナールなど、座薬にアンヒバ、アルピニーなどがあります)「39.5℃で使ったのに、38.5℃にしかならない」といった問い合わせもよくありますが、1℃下がって少し楽になればそれで目的は達せられたのです。ひと休みしたら、またフーフーしばらくは頑張りましょう!
発熱時の注意点
熱以外の症状や全身状態の観察を!
高熱が出ただけで心配する必要はありません。熱の高さに目を奪われずにそれ以外の症状や全身状態の観察をしっかり行いましょう。
脳炎・脳症の兆候は?
寒気が強く震えているような時には呼んでも返事どころではありません。また40℃を超えるような高熱の時には寝ていても熟睡できず、夢を見ている時のようにうわごとを言ったり体を動かしたりすることがあります。しかし熱が上がりきったり解熱剤で少し下がったりすると、とたんに元気が出たり受け答えがしっかりするもので、そんな時にはあわてる必要はありません。もし熱を下げても「トロトロして呼んでも返事が鈍い」「目の動きが乏しい」「意味不明なことを口走る」といった意識障害を疑う状態があれば、すぐに受診して下さい。
| ■■ 使ってはいけない解熱剤 ■■ |
1. スピリンやサリチルアミドなどの「サリチル酸」を含む解熱剤をインフルエンザや水痘に使用すると、急性脳症や肝障害を伴うライ症候群を引き起こす可能性があり、15歳未満の小児への投与は禁忌です。
2. 最近インフルエンザ脳症において死亡率の上昇との関連性が明らかになってから、以前は小児にも日常的に使われていたボンタール(シロップ)や、成人には現在でもしばしば使われるボルタレン(坐薬)という解熱剤は15歳未満の小児には使うべきではないという原則になっています。(他の非ステロイド系抗炎症剤も同様です。)これらは解熱効果が強く一時的にはとても楽になりますが、その分効果が切れると寒気とともに急上昇します。乳幼児や老人では急な低体温でショック状態になることがあります。急な解熱時には大量の発汗を伴い、その分腎臓への血流量が一気に減少します。(濃縮された濃い尿が出るのはそのためです。)それだけ腎臓に負担がかかります。この時胎児では肺動脈と大動脈をつなぐ動脈管という重要な血管が強く収縮して閉じてしまい胎児死亡を引き起こす可能性があり、妊娠中の女性への使用も禁忌です。
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生後2〜3ヶ月までの熱には注意を!
なお生後2〜3ヶ月までの乳児ではまだカゼにかかることはあまりありません。その分、発熱の背景に重い感染症のある可能性が普通のこどもより高く、またもし重い感染症があると進行も早いため、特に注意と早めの受診が必要です。
熱がなければ安心・・・とは限りません!
ここまで熱のことばかり触れてきましたが、熱だけが病気の特徴ではありません。前途した2〜3ヶ月までの乳児の重い感染症では細菌が血液中に入って敗血症という状態になり、熱もないのに急な哺乳力の低下や嘔吐、活気がなくぐったり、といった全身症状の悪化、ショック状態で気付かれることがあります。また乳児期の細気管支炎も、喘息発作のようなひどい咳き込みやゼーゼー、呼吸困難で入院することがしばしばありますが、ほとんどの場合熱はでません。このような時に「熱がないから大丈夫だろう」と放っておいたら一大事です。
発熱時の看護
*冷やした方がよいでしょうか?
頭を冷やしたり冷えピタを貼ったりしても、それで熱を吸い取って下げることはできません。いやがるのに無理矢理押し付けたりする必要はなく、気持ちよく休めるようなら冷やしてあげて下さい。同様に窓を開けて風を通したり、扇風機やエアコンを使ってもかまいません。ただし冷たい風に直接長くあてるのは避けましょう。逆に、ふとんにくるんで熱いものを与えて汗をかかせよう、などということは小さなお子さんには禁物です。
*入浴は?
発熱時には原則として入浴は避けて下さい。汗をかいたらお湯で暖めたタオルで全身をよく拭いて着替えさせて下さい。お尻など、部分的には直接洗ってもかまいません。熱の下がった日はシャワーで汗を流し、翌日も大丈夫なら入浴を始めましょう。
*食事の注意は?
原則として食事の制限はありません。消化の良いもの、栄養のあるものがよいのはもちろんですが、あまりいやがるものを無理に与えても吐いてしまっては意味がありません。''朝昼晩''にこだわらず、熱が下がって気分の良い時を食事の時間にして下さい。熱のある時はどうしても水気のあるものや冷たいものに片寄りがちですが、お腹をこわさない程度に、欲しがるものを優先して与えましょう。
*もっとも大切なこと
私自身こどもの頃はよくカゼをひいて熱を出しました。そんな時にいつもせがんだのは足をさすってもらうことで、そうするとしばらくの間熱のつらさがまぎれました。具合が悪くて不安になっているこどもに一番必要なのは、解熱剤ではなく母親(もちろん父親も)の愛情です。解熱剤を使って''から元気''の出たこどもを放っておくのは「臭いもの(病気のことです)にふたをする」ようなもので、病状の変化を見過ごしかねません。それより冷たいタオルをあてがったり、さすったり、さっぱりした衣類に着替えさせたり、本を読み聞かせたり、そばにいて看病してあげてください。身近でよくみていれば、病状の変化にも早く気づくことができます。最後に、薬剤師のOさんからいただいた名言を・・・
熱を出したら、食べたいだけのアイスクリームと
''いつもより優しいお母さん''!
前半はともかく、後半はすべてのこどもたちに共通の願望だと思いませんか?
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